電話ボックス

29 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 13:15:37 ID:wiLyLrCS0 

友人k子の体験談。 

真夜中にK子は彼氏とドライブを楽しんでいました。 
そこは人気のない暗い山道。当然、車が走っている気配もありません。 

彼氏と雑談を楽しんでいるとふとK子の目に一つの電話ボックスが飛び込んできました。 
中には10代半ばと思わしき若い女の子が電話をしている様子。 
辺りには、彼女を待つ人の姿もなければ、車もバイクも自転車もない。 
一体、どうやってこんな山奥に来たのだろう? 
「こんな真夜中にどうしたのかしら?」 
そう思い、彼氏にそのことを伝えようとしたその時です。 


30 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 13:15:37 ID:wiLyLrCS0 

電話ボックスにいた女の子が受話器を置き、k子の方をぐるりと振り向いたのですが、 
その女の子の首には包丁が深く刺さっていたというのです。そして女の子は自ら首に刺さっている包丁を抜き、 
電話ボックス全体を真っ赤な血で染めたというのです。 

これを間近で見たk子は気を失ってしまいました。 
気がつけば、k子は病院のベットの上だったのですが、そばにいた彼氏に一連のことを全て話したそうです。 

これは、後日直接k子から聞いたのですが、ここまで聞いた私は身の毛のよだつ思いでした。 
しかし、k子は次に信じられないことを言い出すのです。 

「病院で彼氏にそのことを全て話したとき、「電話ボックス、あの時、あったでしょ?気がつかなかった?」と聞いたの。
でも彼氏は「俺には何も見えなかった。電話ボックスも、女の子も・・・ただ、急にk子が前触れもなく倒れたからびっくりした」と言うの。 
それって私にしか見えなかったってことでしょ?」 

じゃあ、あの電話ボックスと女の子は何だったのだろうか? 
現在、k子とその彼氏は別れてしまいましたが、k子はあの時のことを1回だけ口にした限り、 
これ以上なにも語ろうとはしませんでした。



45 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 16:15:37 ID:hadhjFSW0

このお話は、私がまだ今の住所に引っ越すまえの住所で 
大変噂になったお話です。 
その前の住所の近くの公園の裏には「宇宙科学館」という 
プラネタリウムつきの科学館があるのですが 
その入り口付近にある電話ボックスを夜中の二時に使うと 
変な声が聞こえるんだそうです。 
友達のなかに、そういう話に敏感な人がいました。 
それがTとSでした。 
 

48 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 16:15:37 ID:hadhjFSW0
 
待ち合わせをして彼らが現地に到着したのは午前二時ちょっと前 
だったらしいです。 
二人とも怖いものは好きですがそんな噂を聞いた後では 
夜中に薄暗い光を放つ電話ボックスは流石に不気味に見えてきます。 
「よし・・・いってみるか・・・」 
TがSに言いました。 
Sがテレホンカード片手にTと並んで電話ボックスに向かって歩いて 
いきます。 
電話ボックスのまえに来るなり、突然Tが「一緒に入ろうぜ」と言い 
あの狭い電話ボックスの中にTとSは二人で入ったのです。 
きっとTもひとりじゃこわかったのでしょう。 
 

49 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 16:15:37 ID:hadhjFSW0
 
何処に電話をかけようがこんな真夜中に電話するなんて非常識です。 
仕方なく2人はお互いの家のどちらかに電話することにしました。 
一度電話ボックスから出て、ふたりはじゃんけんを始めました。 
負けたのはTでした、結局Tの実家に電話をかけることになり 
2人はまた電話ボックスの中に入りました。 
Sがカードを入れ、素早くTが自宅の電話番号を押していきます。 
「プルルルルル・・・」 
何度かコールしているのですが、誰も出ません。 
「誰も出ないし、やっぱもう寝てるよ」 
TがSにそういうと 
「ちょっと貸して」Sも確認したかったのでしょう。 
Tから受話器を奪い取り、Sが受話器を耳にあてます。 
すると
「ガチャッ」 
「おい、誰か出たぞ!」SはすぐTに受話器を返しました。  
Tが「もしもし・・?」と応対しました。 
「ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあああああああ」 
それは女の声で、何だか遠くの方からこっちへ近づいてくるような声なのです! 
「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ」 
明らかにTの両親の声ではありません。その声は横にいたSの耳にも届くほど、どんどん 
大きくなっていきます。 
「お、おい、何だよそれ・・・?」 
Sが青ざめた顔でTに聞きます。 
Tは慌てて受話器を置きました。 
「これ、ヤバイよ・・もう行こうぜ」 
「い、今の声・・何だよ・・?」 
Sがしつこく聞いてきましたがTはSを押しやるようにして外に出ました。 
そして、ふとTとSが今出てきた電話ボックスを振り返ると 
そこにはとんでもないものが映っていました。 
 

50 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 16:15:37 ID:hadhjFSW0
 
反射した電話ボックスのガラスの向こうから女が走ってくるのです! 
反射したガラスの向こう・・・つまりそれはTとSの背後です! 
TとSはおもわずふりかえりました! 
が・・だれもいないのです・・ 
走ってくる音も聞こえません。 
再度電話ボックスを見るとやはり、ガラスにはその女が映っています! 
更にその女は猛スピードでTとSに向かって走って来ているのです! 
そう、反射したガラスの中だけで・・・ 

2人はいちもくさんに逃げてTのいえに駆け込み、そのまま一夜を過ごしました。 
翌朝、ほっとした2人はTの母親の発した言葉にまたさらに凍り付きました。 
「昨日、夜中近くに電話があってね、 
ああああああああああああああああああああ 
っていう気味の悪い女の人の声が聞こえたのよ。 
お母さん、怖くって電話切っちゃった」 
いろいろまつわる話はありますがこの話がいちばん近所で有名でした。



140 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 18:15:37 ID:HBZyfsf00

もう10年近く前。そうだな、まだ街のあちこちに電話ボックスがあった頃の話だ。 
ある3連休の前の金曜日。俺は大学の仲間としたたかに飲んだ。 
深夜1時前、仕上げに屋台のラーメン食べて流れ解散。 
そして、ふと、思いついたんだ。明日は特に予定も無い、酔い覚ましに歩いて帰ろうって。

終電は過ぎてたけどタクシー乗るのは簡単。でもそれだと二日酔いが酷いような気がしてさ。 
ケイタイを持ってなかったから電話ボックスで母親に「歩いて帰る」と電話しようと思った。 
その頃は幹線道路のバス停には大抵電話ボックスがあったんだよ。 
最初のバス停で電話ボックスに入った。?何か変だ? 
微かな香水の匂い。よく見ると受話器が電話機の上に置いたままになってる。
 

142 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 18:15:37 ID:HBZyfsf00
 
受話器に耳を当てると既に通話は切れてて無機質な電子音だけが聞こえた。 
酔っ払いが置き忘れたんだろうと思って受話器をフックに戻した。すると。 
ジャラジャラと音がして返却口に10円玉、6枚。 
ラッキー。10円玉2枚で母親に電話をかけ、残りの40円をポケットに入れて歩き出した。 
でも、何か気になるよね。次のバス停でも電話ボックスを覗いてみた。
...やっぱり受話器が電話機の上に置いてある。そして香水の匂い。 
受話器の向こうは電子音、受話器をフックに戻すと今度は10円玉が5枚。 
次の電話ボックスでも、その次の電話ボックスでも、同じ。 
電話機の上の受話器。電子音と戻ってくる10円玉。もう19枚。 
その次の電話ボックスが見えた時、歩き去る人影が見えた気がした。 
むせるような香水の匂い。そこでも5枚の10円玉、合計24枚。
そして、その次の電話ボックス。電話ボックスから出て行く人影がハッキリ見えた。 
真っ赤なワンピースを着た女性(多分)、微笑んでいるように見えた。 
俺は女性が遠ざかるのを待って電話ボックスに入った。 
受話器を耳に当てる。叫ぶような声が聞こえた。
「なあ、お前K子だろ?もう、こんなこと止めろよ。止めてくれよ。 
俺たち、寝られなくて参ってるんだ。一度、ちゃんと話しよう、な?」 
俺は思わず電話を切った。ジャラジャラと戻ってくる10円玉。 
「何故勝手に切るの?邪魔しないでよ。」 
振り向くと、俺の背中側から赤いワンピースの女が覗き込んでいた。 
 

149 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 18:15:37 ID:HBZyfsf00

闇の中に浮かぶ綺麗な白い顔がニコニコ笑って俺を見詰めている。 
「ねぇ、邪魔、しないでよ。」 
あまりに現実離れした綺麗な顔、怖くて怖くてとても生身の人間には見えなかった。
俺は電話ボックスを飛び出して全力で走った。家までの残り2kmを多分6分台。 
途中ラーメンを吐いたが必死で走り続けた。 
家が見えた所でポケットの中の10円玉をみんな取り出して捨てた。 
背中からいつあの女に声をかけられるか、本当に気が気では無かった。
それから数日、着替えても風呂に入っても香水の匂いは消えなかった。 
あの女が人だったのか、そうでなかったのか、今も分からない。 
深夜、幹線道路を彷徨いながら、 
「あれ」は一体どれだけの無言電話をかけて歩いていたのだろうか。
 

151 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/30(水) 18:15:37 ID:HBZyfsf00

何枚の10円玉を持ち歩いていたのだろうか。 
俺にとっては洒落にならない怖い経験だったよ。 
もちろんそれからは飲んだ後に歩いて帰るのは止めた。
ドライブイン
この話はオカルトや怪談に入るのかどうなのか、ちょっと微妙な所なのだが、 
他に書くところもないし個人的には非常に怖かった体験なのでここに書きます。 
それと、もう何ヶ月も前の事なので会話はうろ覚えの部分が多く、
「当時こんな感じだった」程度に思いつきで書いています、
不自然に思ったり違和感を感じたらごめんなさい。
去年の夏に友人たちと集まっていた時、何となく暇なのでどこかドライブいかないか? 
という話になって、大した目的もなく一般道だけを使って長野まで行く事になった。 
メンバーは俺、A、B、Cの4人、まあ、暇なときあつまるのは大抵この面子なのだが。 
目的もなく出発したので当然することも無く、男4人でむさくるしく適当に観光地で飯を食い、 
日が暮れてかなり暗くなった頃に帰る事になった。
お気に入り詳細を見る
交代で運転しながら長野と群馬の県境?
(少し前に浅間山方面がどうのって看板を見たのでそのあたりだと思う)を
カーナビを頼りに走っていると、運転していたAが助手席に 
座っていた俺に「なんか道おかしくね?カーナビの順路合ってる?」と言ってきた。 
俺は特に何も気付いていなかったのだが、いわれて見るとたしかになんか変な感じがする。



75 本当にあった怖い名無し 文章下手でごめんね 2005/05/24(火) 07:29:15 ID:wwmBUTDMO
 
友人から聞いた話。
その友人をAとして、ある日Aの家にBが遊びに来る事になっていた。
Bは途中まで来たけど道が分からなくなってしまい、Aに電話しようとしたけど携帯の電池がきれてしまった。
仕方ないので公衆電話を探すと、橋のたもとに電話ボックスがあったのでそこから電話をした。
「もしもし?今、八木山橋まで来たんだけど道分からなくて、公衆からかけてんだけど」
「八木山橋?私ずっとこっちの方住んでるけど、八木山橋に公衆なんてないよ?」
「いや、電話ボックスあるんだって。でも後ろに人いっぱい並んでるから、一回切って並びなおしてからかけるね!」
それを聞いた時、Aはすごく嫌な予感がしたそう。八木山橋ってのは自殺の名所で、
下は渓谷になっていて今は自殺防止の為に柵まで作られてる場所。それに八木山橋に電話ボックスなんて確かに無いはず。
「待って!電話ボックス出ちゃダメ!絶対出ないで。」
「なんで?とにかく後ろすごい並んでるから出なきゃ。」
「いいから出ないで。あたしが行くまで絶対にそこから出ないで!」
Aは車を飛ばして橋まで行くと、Bは橋のたもとの崖っぷちで放心状態で立っていたという。
もし電話ボックスを出て列の後ろに並んでいたらBは確実に崖の下に落ちていたそう。 



333 本当にあった怖い名無し
 
俺には大学院生の兄がいる。その兄は何がきっかけか知らないけどここ数年で様子が変わってしまった。
昔は気さくで大らかな性格だったのだが今では急に怒鳴ったり笑ったりとしばしば情緒不安定な振る舞いを見せる。心なしか口調もきつくなった。
そして一番の変化は普通の人には見えないもの、所謂幽霊の類が見えているようだってこと。
そんな兄の最近の話をしようと思う。
 

334 本当にあった怖い名無し
 
年末年始も帰省してこないような親不孝の兄が、去年の暮れ久しぶりに実家に帰ってきた。12月29日だった。帰ってくるなり
「車を出せ、ホームセンターに行くぞ」
自分で運転したらいいだろと思ったが、久しぶりの兄との再会だったし、慣れない雪道を運転させては危険だと思い二つ返事で従った。
買い物の目的はどうやら大掃除用の洗剤なんからしく、なんとも殊勝なことだと感心した。
買い物リストは携帯にメモっており、それを見ながらひとつひとつカートに入れていった。
洗剤を2種類、バケツを1つ、あとは雑巾やガムテープ、マスク等を購入した。
少し気になったのが、マスクはよく見る白地のものじゃなく、除草剤なんかを散布するときに使用する少し厚手の、ちょっとしたガスマスクのような立派なものだったこと。
「いい買い物をした」
などと上機嫌な兄を助手席にのせ再び雪道を走らせた。
 

335 本当にあった怖い名無し
 
翌日30日、我が家では大掃除の日。
兄は昼過ぎまで寝ていた。午後になって起きて来たかと思うと遅めの昼食を食べまた眠ってしまった。
昨日の準備の張り切りようはなんだったのかと思いながら無理やりたたき起こしトイレ掃除をやらせた。

更に翌31日、大晦日。
夕食後は居間で兄弟(兄・自分・妹)3人仲良くガキ使を見ていた。もう数時間で年が明けようというころ、兄が除夜の鐘を突きに行こうと言い出した。
小学生のときによく祖父に連れられて近くのお寺の鐘を突きにいったことがあったが、兄が実家を離れてからはめっきり行かなくなっていた。
妹は半分寝ていたので(それでもガキ使を見ながら時折笑うのが怖かった)そのままそっとしておいて兄と二人でお寺へ向かった。
車を走らせていると兄がお寺に行く前に寄りたいところがあると言い出した。
そこは全く正反対の方向だったが、その先にあるコンビニにでも寄って行きたいのだろうと思って兄の支持に従った。
「車を止めろ」
停車したのは母校の○○中学、その前にある電話ボックスのすぐ隣だった。
 

337 本当にあった怖い名無し
 
ここでこの電話ボックスにまつわる曰くについて話しておく。
俺がこの中学に通うようになる以前から、更には兄が中学生だった以前からその噂は存在していたんだと思う。
パターンとしてはありがちなものだ。電話ボックスのそばを通っていると突然呼び鈴が鳴り出す。
そして受話器に出ると得体の知れないうめき声やお経、水の音なんかが聞こえてくるというものだ。
ただの悪戯かも知れない。それに、そんな気味の悪い内容ばかりなら誰も受話器を取らなそうなものだけど。
それでもこの怪談が多くの生徒を惹きつけたのは、稀にその電話が未来の自分と繋がるというからだ。
ある噂は受話器の向こうの自分は死んでいるんだという。ある噂は受話器の向こうの自分は余命を教えてくれるという。会話はできるだとかできないだとか、
こちらから話しかけると寿命が半分になるなんてのもあった。
 

338 本当にあった怖い名無し
 
そんな不吉な噂でも女子の間では占い感覚でもてはやされていた。お電話様とかダイヤル様なんて呼称して、傍から聞いている分には酷くこっけいな名前だった。
興味の中心は女の子らしく恋バナで、片恋相手とはうまくいくか、いつ結婚するのか、子どもは何人産まれるんだ、そんなことをお電話様に聞いているらしかった。
ただ俺自身はそのお電話様なんてのと話したこともなければ、ひとりでに鳴る公衆電話のベルも耳にすることは無かった。
 

340 本当にあった怖い名無し
 
話を戻そう。
俺は兄と二人でその電話ボックスに横付けされた車の中にいる。
このご時勢にまだ電話ボックスがあったことに少し驚いたが、当時同様今もうちの中学は携帯の持参を認めていないのだろう。
そんなことを考えているうちに兄は勢いよく車外に飛び出し、トランクを開けごそごそと何やら取りだした。出てきたのは一昨日買った掃除道具だった。昨日使わなかったと思っていたが車に乗せっぱなしだったのか。
マスクをし、購入品一式をアスファルトの上に並べると今度は財布からテレホンカードを取り出した。
「いいものを見せてやる」
そう言ってバケツと一緒に電話ボックスに入り、カードを挿入しボタンをプッシュしだした。しばらく受話器に耳を当てたかと思うと、紐をだらんと垂らして受話器を放置しバケツの中から洗剤の容器を取り出した。冬の冷たい空気に、微かに電話の呼び出し音が響いていた。
 

341 本当にあった怖い名無し
 
手にした洗剤の封を開け、中身を勢い良くバケツに注ぐ。1本目を入れ終えるとすぐさま2本目を開封した。二つ目の容器も空になるとそれらを無造作に投げ捨て、バケツを放置し電話ボックスから出てきた。続けてガムテープでドアを目張りする。
ドアを閉められてコール音が聞こえなくなった。さらにバケツからはなにやら気体が発生しているのがわかる。電話ボックスの中は霧に包まれ次第に白く濁っていった。
「窓を閉めとけ」
背中を向けたまま兄がそう言った。危ないからな、と。
兄はガスで見えなくなったガラスの向こうを見つめていた。聞こえないはずのコール音がまだ響いている気がした。
 

346 本当にあった怖い名無し
 
1分くらいたっただろうか。
「・・・だめか」
兄がそうつぶやいた。どうやら電話が切れてしまったらしい。
兄の奇行と冬の寒さに固まっていた思考回路がようやく働き出し、そろそろ行こうと声を掛けたが、兄は動かなかった。
「もう少し」
そう言ったんだと思う。兄のその返事にかぶさるように今度はけたたましく電話の呼び出音が響いた。
余りに突然のことで、一瞬耳が痛いようだった。電話は切れたんじゃなかったのか、もっと言えば受話器はまだぶら下がったままのはず。
そんな状態でいったい誰から掛かってくるというのだろう。
答えられるはずもなかった。
 

347 本当にあった怖い名無し
 
今度は恐怖に思考が停止していると、兄はうるさく音が漏れる電話ボックスに手を伸ばした。
ガラスに張り付くように掌を当てる。
ドンッ…!!鈍い音がした。兄がガラスを蹴ったらしい。ドン、ドンと更に数回蹴飛ばしている。ベルの音は鳴り止まない。
「ははは、苦しいだろう。毒ガスはお前をちゃんと殺してくれるよ」
呼び出し音が大きくなった気がした。頭に響く嫌な音。その音に向かい兄は罵声を浴びせる、
「早く死ね、そしてなくなれ、もうお前は殺しただろう」
この死に損ないが、と続く。
今まで兄の口からは聞いたことの無い言葉が溢れていた。
 

348 本当にあった怖い名無し
 
何分たっただろうか。俺は耳を塞いで俯いていた。電話のベルも兄の言葉もこれ以上聞いていられなかった。
気づくと音は止んでいた。暗い足元から電話ボックスに視線を戻すと兄が中を雑巾で拭いていた。
最後にペットボトルに入った水で中を洗い流すと洗剤の容器や雑巾、ガムテープを一通りゴミ袋に詰め、トランクに放り投げた。
「はー、さみー」
手をこすり合わせて助手席に乗り込んできた兄は、もう用事は済んだからコンビニでも寄って○○寺に行こう。
まだ鐘突きやってるといいけど、そう言って先を促した。
 

349 本当にあった怖い名無し
 
その後、兄は除夜の鐘を一人で20回も突いたり、雪だまを後ろから投げつけてきたりと無邪気にはしゃいでいた。
ただ厚手のマスクを付けっぱなしでいたことには家に帰って洗面所の鏡を見るまで気づかなかったようだ。
コンビニ店員や他の参拝客に変な目で見られたのはそのせいかと一人納得した後、何故教えてくれなかったのかと一発殴られた。
理不尽だと思ったがあの兄を見た後では言い返すことができなかった。
久しぶりに聞いた鐘の音は大変厳かで、あの響きの良さは小学生のころは理解できなかったな、
とか非常に満足した様子で兄は一人酒盛りを始めた。一緒にどうかと誘われたが俺はとてもそんな気にはなれず、
除夜の鐘の音なんかが耳に入らないほどに頭にこびりついてしまった電話の呼び出し音と、兄を睨む住職の表情を思い返していた。
 

350 本当にあった怖い名無し
 
翌日、1月1日、ためらわれたが気になって仕方なかったので昨日の出来事はなんだったのかと兄に聞いてみた。
「幽霊を殺したった」
「誰の幽霊かて?強いて言うなら俺の、でも何か元はあるんだと思う」
「電話はあの公衆電話自身に掛けた。公衆電話にもちゃんと個別の番号があるのは知ってるだろ?」
「お前もあの電話ボックスの噂話くらい聞いたことあるよな」
「こっちから掛けても繋がることがあるってのは知られてなかったのかも」
「俺は話したことある、自分の寿命を決められた」
「いや、とっくに過ぎてる。3年前の夏だった」
「まぁ今回のは復讐だよ、寿命を奪った復讐」
「それよりパチンコ連れてけ、お前の店の設定を教えろよ」